なんでも上がるほうがラクなのだそうだ。それに上がるのには、楽しみふもともある。緑の濃い山の麓には、輝く青い海が広がっているのだ。そして先生は、二階リビングのお住まいを建てられたことに、ちっとも後悔なんかしていらっしゃらない。むしろ自慢げだ。先生が、お医者様も驚くほどの回復を見せられたのには、どうもこの二階リビングの住まいの効用があったに違いない。楽しみを持って上がり降りするのが、意欲的なリハビリになっていたと思う。いまでは、左手で美しい景色の絵を描いて、画集をつくったり、個展を開かれたりもしている。私はいまでも先生から、自筆のお手紙をいただく。これは本当に感動的で素晴らしいことだと思う。私は、武先生の奥様の年齢をおうかがいしたことはないのだが、本当にビックリするくらいお若いのだ。それこそ、トントントントンと、音を立てて階段を上がっていらっしゃる。お二人とも、このお住まいを持たれたことを、とても楽しんでいらっしゃるようだ。もし、先生のお宅が、段差のないバリアフリーの家だったら、お二人は、こうまでお元気ではなかったのではないかとさえ、私は思ってしまうのである。

· · · ◊ ◊ ◊ · · ·

Leave a Reply

You must be logged in to post a comment.